书籍封面
密室という言葉がタイトルにあるため「密室といえば、驚天動地のトリックでしょッ!」とマニアは大期待してしまうかと思うのですが、ほとんどの参加陣は現代本格の先鋭たちゆえやや趣は異なります。しかし「すげー密室トリック思いついたから短編ひとつ仕上げたろッ!」みたいなカンジでおトイレ臭いトリックをカマして一丁上がりィなんて密室ものはもうウンザリという自分はかなり愉しめました。 収録作は、心の機微を絶妙な伏線へと転化させ、フーダニットでも超絶に驚かせてくれる大山誠一郎「少年と少女の密室」、美夜タンと「犯人」との激烈な心理戦から立ち上る悲哀が秀逸な天祢涼「楢山鍵店、最後の鍵」、否定される推理を重ねていく「やりすぎ」が作者ならではの悲哀の真相を描き出す小島正樹「密室からの逃亡者」、不可能趣味溢れる密室状況に後日談を添えることで異形の時代推理へと昇華させた怪作、安萬純一「峡谷の檻」、後ろ向きのトリックを凝らしながらも事件の構図から浮かび上がる青春の苦みと余韻が心に残る麻生荘太郎「寒い朝だった――失踪した少女の謎」他、全六編。
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